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“誇り”を伝える下準備:グローバルサイトの可能性 第3回

 


「なるほど、タグラインか。要はウチの心意気を表すキャッチフレーズみたいなもんだな」東京の下町育ちである社長は嬉しそうに言った。小野はすぐに作れそうな気がした。
「これだったら、みんなにもアイデアを出してもらえば何とかなりそうですね。」
作るだけならそうかも知れないが、実際はその後が問題なんだな・・・これが。」
社長は急に醒めた目で語り始めた。
「この間、初めて会う銀行の人が来たが、彼が最初に知りたかったのはウチの技術力じゃない。何年に創業して、どのくらいの業績で、クライアントがどこ・・・っていう基本的な情報だったんだ。強みとかそういう話を聞く前に、まず信用できる企業か?ってとこが大事なんだな。」
「なるほど!」最近、趣味で映像の編集に凝り始めた小野にアイデアが浮かんだ。 (続く)


 

About Usの役割

最近、海外で使う見込客向けのプレゼンテーション用ムービーや営業ツールを制作する仕事をいくつか手がけました。クライアントの皆さんは異口同音に、海外では以下のような話を最初に聞かせてくれというリクエストがあるので、イントロダクションの部分に入れて欲しいとおっしゃいます。

  • 創業のきっかけやその後の発展(沿革)
  • 国内外を含めた販売・生産拠点(数)
  • 最近の業績推移や従業員数 etc

プレゼンテーションでは、「あれができます、ウチならこんなバリューが提供できます」とアピールするのですが、それを聞いてもらう前にこういった企業の信用力に関する情報を伝えます。
これらの情報を元に、聴く側はアピール内容を額面通り受け取るのか、それとも少し距離を置いて冷静に話を聞こうとするのかを決めるというわけです。

グローバルサイトでは、こうした信用力に関わる情報がAbout UsやAbout●●●(企業名)というタイトルでまとめられています

トップページで“誇り”のメッセージを受け取った後、さらに詳細な強みやバリューといった“誇り”を理解する下準備として、こうした情報を読んでもらうのです。このAbout Usのタイトルは、探しやすいようにグローバルナビの左か右端にあるケースがほとんどです。

さて、優れたAbout Usとはどういうものでしょうか?

 

魅力的、よりも整然かつ簡潔が優先されるAbout Us

富士フイルムのAbout Us扉ページは、ほとんどのAbout Usがそうであるように、トップメッセージから経営理念、財務状況などの項目が整然と並べられ、企業の信用力の目安になるような項目が迷いなく選べるようになっています。

事例:富士フイルム

富士フィルム

企業側としては、なるべく短時間で信用力を認めてもらい、強みや製品・サービスを紹介したページに早く移動して欲しいわけですから、About Usでご覧いただく情報はなるべくコンパクトに構成する必要があります。

 

このように情報を選ぶ側の立場に立って構成されたAbout Usが多い中、自社の信用力や規模をアピールし、尚かつ、見る側のニーズにも的確に応えているコンテンツもあります。
こちらは海外市場への展開数、従業員数、そして創業年数の3つの数字をキーワードに企業の信用力をコンパクトに伝えています。

事例:武田薬品工業

武田薬品工業

これは、武田薬品工業のABOUT TAKEDA内にある「Expressing Takeda in Numbers」というコンテンツですが、企業を魅力的に伝えようとするのではなく、1分以内で企業の信用力を簡潔に伝えてしまおうという意欲が感じられます。トップページのかなり目立つ位置にも、このコンテンツへ誘導するバナーが設置されています。

 

さて、About Usの情報に動画を使う選択肢はあるのでしょうか?
動画は表現力が豊かで、かつ魅力的に情報を伝えることができるので、短時間で企業の信用力や規模を把握して欲しいAbout Usには適した手法に思えます。

よくグローバルサイト構築の注意事項として、ナローバンドで見ている地域への配慮があげられます。確かにそうしたことも重要ですが、最近はデバイス側の処理能力も向上したので、About Usでも動画コンテンツを見かけることが多くなりました。

 

こちらのDuPontのOur CompanyにあるOur Commitment to Inclusive Innovationという動画は約2分という長さですが、かなり見ごたえがあります。

事例:DuPont

DuPont

DuPontが取り組んでいるエネルギーや食糧問題、そして安全・安心の3点をシンプルな言葉で具体的に語られている点が、グローバルを強く意識したものであることを感じさせます。また、そこには自信と“誇り”があふれています。

このようにAbout Usは一見地味な存在のようですが、企業の強みやバリューを紹介するうえで、そのリアリティを担保する重要な情報となります。つまりAbout Usのコンテンツは、その企業がグローバルサイトで発信したいメッセージにしたがって構成していく必要があるのです。

皆さんのAbout Usには、何か工夫がありますか?

 

次回予告:企業戦略との関係