WORKS 実績紹介 WORKS 実績紹介

BLOGブログ

スポーツへの想いを体現するアクティベーション

東京2020オリンピック・パラリンピックのTOPスポンサーであるPanasonicが、キャンペーン「Beautiful JAPAN towards 2020」を展開しています。「まだ4年も先なのに気が早いな・・・」と思った方もいらっしゃると思いますが、これはアクティベーションと呼ばれる取組みで、決して“フライング”ではないのです。

 

単なる協賛を投資に変えるアクティベーション

1984年のロサンゼルスが発端となった運営費の一部を企業の協賛金で補う仕組みは、スポーツビジネスとして進化を続けています。特に2012年のロンドンあたりからスポンサー企業の取組み方が変化してきました。スポンサー企業の中で、企業や商品のロゴが露出するだけで満足していた協賛から、企業の経営課題を解決する投資としての位置づけに変わってきたのです。

このような単なる協賛を投資に変えていくようなコミュニケーション活動をアクティベーションと呼びます。その先進的な取り組みをPanasonicが展開しています。
事例:Panasonic / Beautiful JAPAN towards 2020

toppage02

まずは、アクティベーションについて少し解説させてください。

オリンピックは世界中の注目を集めますが、サッカーのFIFAワールドカップなどとは違い、テレビに映る競技会場に企業や商品のロゴが大きく露出するわけではありません。そこで企業は開催中にテレビCMやWebなどの様々なメディアを通じてメッセージを集中投下するのですが、実際の売り上げや好感度アップなどにはほとんど貢献していないことが、最近のデジタルマーケティング技術のおかげで分かってきました。

そこで企業自身がスポーツ文化やオリンピック・パラリンピックとの関わりや、社会に対して何を貢献していくのかという理念をベースに、開催の数年前からコミュニケーション活動を展開し、開催中はむしろ何もしないようなアクティベーションの取組み方が生まれたのです。このアクティベーションのゴールはブランディングに求めるものに近く、スポンサーとしての認知向上のみならず、取組みの理念に共感していただき、商品やサービスを積極的に選んでもらったり、SNSでの口コミ促進に期待するところにあります。

このため、協賛金を1とすれば、アクティベーションには1.5~2倍の費用がかかると言われ、これを合せて投資と捉えられています。

アクティベーションの具体例としては、以下のようなものがあげられます。
●学校などで少年少女にスポーツの機会を提供する
●次世代のトップ選手を発掘して奨学金などを提供する
●地域でスポーツ文化に貢献している方を聖火ランナーに採用する

PanasonicでもBeautiful JAPAN towards 2020以外に、オリンピック・パラリンピックを通じた学びを提供するActive Learning Campと呼ぶ取組みをされています。これは東京都江東区有明にあるパナソニックセンター東京内に学びの場が設定されている他、学校にも教育プログラムを提供されています。

東京2020オリンピック・パラリンピックのスポンサーは2016年12月現在で37社となっており、過去大会と比べるとずば抜けて多くなっています。これだけの数があると差別化が難しくなってくるので、いち早くアクティベーションを先行させているPanasonicにはアドバンテージがあると言えます。

 

「美しさ」にフォーカスした日本らしいテーマ設定

Beautiful JAPAN towards 2020は「美しさ」にフォーカスすることで、事業課題と東京2020オリンピック・パラリンピックのあるべき姿を的確に映し出していると考えます。

事業課題では4Kテレビの「画像の美しさ」が中心テーマになっています。2016年12月現在では40インチ以下のものは10万円を切っていますし、2020年ごろにはBSによる4K放送が始まると言われていますので、買い替えするなら4Kテレビを検討される方も多いことでしょう。ここでのシェア獲得はPanasonicにとって大きな課題でしょう。

Beautiful JAPAN towards 2020は動画コンテンツが中心になっていますが、4Kで撮影された美しい画像を楽しむことができます。
事例:Tokyo Track and Field TVCM Clip

スポーツとの結びつきで言うと「強さ」や「挑戦」、「鍛錬」などの言葉が浮かびがちですが、ひたむきに何かを目指してスポーツしている「人の美しさ」はスポーツ文化全体への共感を呼び覚まします。
Beautiful JAPAN towards 2020では数多くの人がが登場しますが、実際に彼や彼女たちが東京2020オリンピック・パラリンピックに登場しなくても、晴れの舞台に立った選手たちには同じようなそれぞれのストーリーや想いがあることが容易に想像できるようになるでしょう。

また「美しさ」は日本を訪れる多くの外国人をひきつける日本の魅力でもあります。自然や文化、暮らしの中にある日本人独特の美意識は独自のものですし、第1次安倍内閣で「美しい国へ」というスローガンが掲げられていましたが、日本という「国の美しさ」とよくつながるキーワードだと思います。

このように、Beautiful JAPAN towards 2020はアクティベーションの大きな課題であるスポンサー企業とスポーツ、もしくはオリンピック・パラリンピックとの絆や関係性を「美しさ」をキーワードに鮮明に描き出しているコミュニケーション活動だと考えます。

 

建前でない、本音のコミュニケーション

近年の企業コミュニケーションの傾向として、自分たちが社会に対して貢献している“良いこと”を建前や飾り過ぎることなく、本音で誠実に語る事例が多く見られます。Beautiful JAPAN towards 2020の動画コンテンツも、どれも人を丁寧に描き出しているので、そうした傾向を踏まえた姿勢が強く感じられます。

東京でのオリンピック・パラリンピック開催が決まったのは2013年9月であり、JAPAN towards 2020はそのわずか1年後に始動しています。このアクティベーションが今後どのように深まっていくのか楽しみですし、Webサイトには英語版も用意されていますので、これがグローバルへ広がっていけば日本らしいオリンピック・パラリンピックのあり方が理解されるのではないかと思うので、楽しみにしたいと思います。