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アブラカダブラ 第三弾 作:りんたろう 音楽:本多尚美&本多俊之

 

高橋 今回の作品はいままでとは違ったストーリー性のある仕上がりになっていますね。

りんたろう 基本的なアート世界にちょっとした物語を入れてみようと思ったんですよ。

高橋 消しゴムが主人公って面白いですけど、どういう意図があったんでしょうか?

りんたろう 意図ってほどじゃないけど、絵を描く作業はMacでやってるので、消しゴムはただ転がってるだけの無用の長物になっちゃってるわけですよ。で、ちびた消しゴムを捨てようと手にとって眺めてる時、こいつを主人公にしたら面白いかもって思っただけですよ。それとは別に、以前に読んだ寺山修司のエッセイ『消しゴム』とかロブ・グリエの小説『消しゴム』とかもイメージとしてあったんじゃないかな。ま、ちびた消しゴムへの感謝状的映像ってことですね。

高橋 誰でも消しゴムを買う時ってたくさんの種類の中から選びますよね。でも買った後はほとんど無意識で使って、ちっちゃくなればポイと捨ててしまう。その消しゴムへの感謝ですか。ちょっとした消しゴム哲学ですねぇ。

りんたろう 確かにね。この消しゴム哲学に似合う舞台は何がいいかなぁと考えた時に、メランコリックな街路の風景を描いたデ・キリコが浮かんだわけですよ。

高橋 ピカソ、ミロ、マチスときて、キリコってことになったんですね。ピッタリはまっていました。その映像にピアノがすごくマッチしていて、消しゴムが愛おしくなりました。

りんたろう ほんと。照れちゃうくらい可愛く思っちゃいましたよ。音楽の魔法で最高の映像になりました。ほんとはすごく迷ってたんですよ、本多さんの奥さんにまでお願いするのは図々しいにもほどがあるってね。でも、気持ち良く引き受けてくれました。やったぁ!と思わず万歳しちゃいましたね。

高橋 全編に渡るピアノの楽曲を作られたのが本多俊之さんの奥様・尚美さんですが、今回初めてりんたろう監督の作品に音楽をつけられ、いかがでしたか?

本多尚美 ABRAKADABRA 一作目、二作目の鮮やかな色彩感と強烈な個性、ユーモアのセンスに魅了されたひとりとして、第三作目の音楽を担当させていただけるなんて、光栄で夢のようでした。その分プレッシャーも多く、映像を観て迷うことしきり。。。とにかく映像の邪魔にならないよう、何回も観たくなるような作品になるよう音楽をつけなければ、と心して取り組ませていただきました。

前二作とは違ったテイストのこの作品。私自身が感じた主人公の消しゴムくんは、せつなく、いじらしく、かわいく、誇らしい。

高橋 寡黙に歩き、消し、そしてまた歩く消しゴムくん。体がどんどん小さくなりながらもひたすら歩き続けますよね。

本多尚美 淡々としたメロディでおしつけない、でもちょっとだけ主張しています。最後の部分は、のほほんっと気楽な感じにしてみました。

高橋 ピアノ以外の音もかなり出てきますが、こちらは常連の本多俊之さんが音を入れられていますね。

本多俊之 今回はほんのちょこっとだけです(笑)。オープニングがブヨブヨの線で始まりますよね。一作目、二作目同様に、そこにいつものブヨブヨ・サックス。これはもうABRAKADABRAシリーズお決まりの冒頭ご挨拶~っ、みたいな感じですね。その後ブヨブヨ線が痙攣(?)を起こして、書き殴った斜線になる辺りは過激サックス、消しゴム登場以降はもうピアノと絵の世界です。りんたろう監督は当初、『よなよなペンギン』の時みたいにトイ・ピアノも考えられていたようですが、いわゆるノーマルなピアノにして大正解だったと思います。

高橋 ピアノ以外の楽器も色々聞こえてきますね。

本多俊之 監督から、消しゴムの声を楽器で、というリクエストがあって、サックスとかバス・クラリネットでトライしてみたのですが、何だかいまいちで、結局カズーという楽器にしました。元々はアフリカの楽器で、これが妙に切なくて、消しゴムくん一生懸命主張してま~す、みたいな感じで(笑)。

本多尚美 カズーで奏でる消しゴムの声が可愛くって、いつもその部分で笑っちゃいます。

本多俊之 その消しゴムくん達が消しクズ(?)を吐き出すところは、低めのフルートの長い音で色づけしてみました。今回のりんたろう監督の世界観に、主張し過ぎず寄り添う風景みたいな音楽、そんな感じになれてたらいいなあ。

りんたろう これはまさしくTREX・本多が奏でる俳句って感じです!その一言につきますね。尚美さんが言うとおり、何度見ても笑っちゃいますし、困ったことに、この絶妙なピアノと俳句的楽曲のコンビネーションは病みつきになりそうです・・・(笑)。