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“誇り”の、その先にあるもの:グローバルサイトの可能性 第8回(最終回)

 


A社倒産後の数ヶ月間、いつも現場で陣頭指揮を執っていた社長が新規営業や資金繰りに忙しく、その姿が1週間以上見えないことも珍しくなかった。
小野の頭の中からもグローバルサイトのことはすっかり消し飛んでいた。
そんなある日、クオンがPCの前で奇声を上げた。
「アメリカのボストンの、あの有名な大学から共同研究のオファーが来ているよ!」
小野は信じられない気持ちで何度もそのメールを読み返した。気が付くと、小野の肩を社長がつかんでいた。「これなら、まず銀行を説得できそうだ・・・」社長がつぶやいた。
小野も、これがもっと大きな可能性をひらく、すべての始まりのような気がした。

(おわり)


 

未知なる可能性を感じて

最終回は、グローバルコミュニケーションの新たな可能性を感じる事例をご紹介しながら、“誇り”のメッセージの先にあるものを考えていきたいと思います。

吉田金属工業は社員100名の企業ですが、刃身から柄まですべてステンレス製の包丁を世界で初めて開発し、その切れ味や使いやすさから世界中の料理人から高い支持を得ています。英語版しかありませんが、吉田金属工業のコーポレートサイトでは、その技術力やこだわりが詳しく、分かりやすく紹介されています。

事例:吉田金属工業
Yoshikins

イメージストーリーにあるような、決して規模は大きくないが独自の技術や創造力を持った企業は、グローバルサイトなどの自社メディアを持ち、持続的な情報発信でビジネスや成長の可能性を広げるきっかけづくりをするべきだと考えます。

 

また、企業だけでなく、自治体など公共団体も積極的なグローバルサイトの展開で地域活性化を促進することも考えられます。

こちらの大阪府のグローバルサイトは、大阪府国際化戦略実行委員会が事業の一環として運営しています。運営の目的が海外の企業やビジネス誘致、観光振興、留学生プロモートと比較的広い範囲に渡っています。規模の小さな自治体なら、もっと個性的で、狙いを絞ったサイト運営が可能ではないかと思います。

事例:おおさかグローバルウェブサイト
osaka

 

また、サイト運営の目的は地域振興だけとは限りません。こちらの「いわて復興ネット」は岩手県が運営する東日本大震災からの復興に関する施策が英語で読めるアーカイブになっています。

事例:いわて復興ネット
Iwate

本当は、市町村などの自治体、NPO・NGOはもちろん、生活者の方々の復興に向けた取り組みや歩みが英語やその他の言語で発信できると、グローバル社会の中で日本という国や文化の理解促進や共感獲得につながると思います。しかし、やはり大変な状況は震災直後から変わらないようで、そこまで情報発信に労力はさけないのが現実だと思います。

 

最後にご紹介する事例は、折形という日本に約700年前から伝わる贈物の包み方を伝えるお宮を紹介したサイトです。

事例:Pavilion MIWA
Miwa

日本語、フランス語、英語で紹介されていますが、決してグローバルサイトという位置づけではなさそうです。しかし、このお宮はパリにあります。現地の方に伝統的な折形だけではなく、現代やフランスにふさわしい折形を広めていくというコンセプト自体は、日本文化を背景としたグローバルコミュニケーションの試みとしては素晴らしく、グローバルサイトも日本文化やその企業・団体の独自の文化が背景にしっかりあるべきだと考えます。

 

“誇り”の先にあるもの

第1回では、リアルな会話の中で日本人は自己主張が弱く、それが外国人から見て日本を分かりにくくしていると書きました。また、その自己主張の源泉として“誇り”を位置づけ、これを軸としたコミュニケーションをご提案してきました。その“誇り”あふれるメッセージは個性的で、より強烈であればあるほど、賛否両論が起こります。称賛の声なら、きっと心地よいでしょう。しかし、問題は否定的な声があがった時なのです。

日本人の特性として、自己主張した後に否定的なコメントを表明されるとあわてたり、ひどい時にはその主張を簡単に撤回することがよくあります。それでは外国人をますます混乱させるか、くみしやすいという印象を与えるだけでしょう。グローバル社会で自己主張が必要なら、否定的なコメントが出るのは避けられません。異論反論があった時は落ち着いて対応し、安易に自分たちの主張を変えることなく、互いを理解し合う気持ちでコミュニケーションすることが重要だと思います。自分たちが正しいと思っていても、立場や見方が変われば、その人やその国にとっては間違っていることがよくあります。しかし、それは単に文化の違いであり、自分たちの主張が間違っていることにはなりません。

考えてみれば、国同士や企業、そして家庭内のもめごとまで、世の中の課題の多くは互いをよく理解をしていないから起こっているように見えます。また逆説的ですが、互いを理解することはたいへん難しく、相互理解が生まれたからといってすべての問題が解決するわけではないので、これをゴールにするのは無理があるでしょう。しかしながら、互いを理解しようとする努力や意欲は、課題を解決に導く“チカラ”にはなるでしょう。ビジネス的に見れば、共通する部分と異なる部分を見つけて、互いの弱点を補ったり、強みを相乗効果で高めたりするアイデアも見つかるかも知れません。

グローバルサイトで“誇り”のメッセージを発信するということは、課題を解決する“チカラ”を生みだし、現在の状況をより良いものに変えていくための一歩を踏み出すことなのだと考えています。

 

8回に渡り、このコラムを読んでいただき、ありがとうございました。8回の内容をもっと掘り下げた2クール目も予定しています。もし、これは素晴らしい!と思えるグローバルサイトに出会った時は、ぜひお知らせください。特に、社員15名くらいの企業サイトがあった時は・・・。