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シンブルかつ合理的なサイト構成とブランド訴求

シトロエンと聞くと、あまりクルマに詳しくない方はフランスのおしゃれなイメージを、よく知っている方は趣味性の高いマニア向けと連想されるかもしれません。そのどちらも当たっていると思いますが、クルマそのものはとても実用的です。そうした思想は合理的かつシンプルなWebサイトのコンテンツ構成にも表れています。

 

一般のドライバー目線での徹底したブランド語り

創業者アンドレ・シトロエンが残した「独創と革新」という思想は、シトロエンを理解する上で最も重要なキーワードです。フォードのように大量生産による大衆車の供給を目指して創業したにも関わらず、奇抜なデザイン、前輪駆動(FF)、ハイドロニューマチック(サスペンション)といった独自の技術と発想を常に世に出し続け、多くの熱狂的なファンを生み出してきました。

そのような語るべき技術があるにも関わらず、シトロエンのグローバルサイトにはほとんどそれが見られません。日本の自動車メーカーの多くが技術のみを取り出して語るコンテンツを提供しているのとは、とても対照的です。
事例:CITROËN INTERNATIONAL

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技術ではなく、乗ってみると何が起こるのか?という一般のドライバーの目線でブランド語りが徹底されている理由は、シトロエンが考える「クルマの真の価値」にありそうです。
それは、日本語サイトの「シトロンエンの歴史」で以下のように語られています。

人が乗って、荷物を積んで、どこかへ出かける。
そんな何気ない暮らしの1コマを、何ものにも代えがたい愉しいひとときに変え、生き生きとした美しいライフスタイルを創造する。

このグローバルサイトは英語とフランス語で提供されており、機能としては各国サイトへの振り分けがメインです。コンテンツは特集、ビジネス(BtoBサービス)、採用情報、レース(モータースポーツ)、プレスリリースとなっており、ソーシャルメディアの投稿への誘導もありますが、コンテンツ構成はかなりシンプルな印象を受けます。

特集ではモータースポーツへの取り組みアピールが目立っています。シトロエンのレース参戦は、かつてはラリーが中心でした。外観上はC4、DS3といった市販の人気車種が疾走する姿はオーナーの心をゆさぶるでしょう。しかし、2014年にサーキットレースとして初めてワークス参戦した世界ツーリングカー選手権(WTCC)でも、2016年までに3連勝を飾っています。

各国サイトを見ていくと、2つのレイアウトパターンがある同一のCMSが使われているようです。いずれも各国での戦略車種やキャンペーンが全面に出てきています。

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各国サイト:フランスアルゼンチン日本

画面の右端に配置されたオレンジのサブメニューには、ディーラー一覧、メールニュース、カタログ請求、試乗予約、商談申込といったマーケティングにフォーカスした機能が備えられています。
グローバルで統一したブランドやマーケティング戦略が取れているところは、非常に合理性が徹底されているように見受けられます。

 

その時代のドライバーになれるユニークなコンテンツ

シトロエンにはもうひとつグローバルサイトがあります。1919年から2017年までの代表的な51車種を振り返るバーチャルミュージアム「CITROËN ORIGINS」です。こちらは10ヶ国語(英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、オランダ語、フラマン語、中国語、ペルシア語)で提供されています。
事例:CITROËN ORIGINS

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ある意味、シトロエンのクルマ作りの歴史が振り返ることができるサイトですが、技術の変遷などの振り返りは単独では存在しません。ここでも一般のドライバー目線でのブランド語りが徹底されているのです。
各車種のコンテンツは、以下のようになっています。

●バーチャルショールーム(360度回転してみることができる)
●サウンドシグネチャー(エンジンかける、ホーン、ドアを閉める音などが聞ける)
●スペック(エンジンや外観、インテリアなどの仕様)
●ギャラリー(写真集)
●インタレスティングファクト(カタログや広告など、当時の資料)

ビジュアルだけでなく、音の演出もかなり凝っています。
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例えば1919年の10 HP TYPE Aを選ぶと、軽やかなデキシーランドジャズ風のピアノソロが聴こえてきます。実は51車種の発表された年に合わせた音楽が各車種に用意されているのです。それぞれの曲調はバラエティに富んでいますが、共通している点はまるでそのクルマを運転している気分になれる、上質なドライビングミュージックであることです。
他にも、イグニッションキーを回すと時代を感じることができますし、ホーンを鳴らせばこの1919年は牛の鳴き声のようだったことが分かります。

このCITROËN ORIGINSで意図されているのは、決して「独創と革新」をこれ見よがしに掲げるのではなく、長い年月にわたる「何気ない暮らしの1コマを、何ものにも代えがたい愉しいひととき」を、再び生活者やファンと共有することにあると考えられます。
ストレートな技術語りも読みごたえがありますが、こうした“おしゃれ”なコンテンツもファンの共感度を高めることでしょう。

 

最短距離でゴールに向かうコミュニケーション

シトロエンは2016年末から新しいブランドキャンペーンとして“CITROËN INSPIRED BY YOU”を展開しています。これはヨーロッパ7ヶ国の約3,500人以上のドライバーに、クルマの中ですることをアンケート調査した結果が下敷きになっています。それによると、私たちは一生の内、4年1ヶ月もクルマの中で過ごすのだとか。
一般のドライバーからクルマのあり方を常に考えている企業姿勢を見ることができます。

何を伝えれば企業として目指しているところに到着できるか?は、もちろん企業によって違うと思いますが、シトロエンの場合は迷いもなく、最短距離で一直線にゴールに向かっているように見えます。
技術語りができるのにしない、一般のドライバー目線を徹底するというようなコミュニケーションの姿勢はシンプルかつ合理的で、学ぶべきところが多いと思います。