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アブラカダブラ 第二弾 作:りんたろう 音楽:本多俊之

りんたろう監督が暇を見つけては一人コツコツと作り続けているお遊びアニメ第二弾、いよいよ公開です。この半年の間、相棒とも言えるMacのハードディスクがクラッシュし、作業半ばで素材がパァになるという災難に遭いつつも、なんとか完成まで辿り着いた愛おしい作品です。どうぞお楽しみ下さい。

 

 

高橋 キャバレーDADA!名前を見た瞬間から、お!これはまた個人的な趣味が詰まっていそうだとの予感がしましたが、その通りですね。

りんたろう そう。何と言ってもキャバレー!快楽の都・パリへのオマージュかな。

高橋 りんたろう監督にとってはパリ=快楽の都なんですね(笑)。

りんたろう 今回はアンリ・マチスの『赤いアトリエ』風なお店を作っちゃおうと思って。作ってる時はロートレックが入り浸っていたキャバレーに居る気分でせっせとMacに向かってましたよ。

高橋 『赤いアトリエ』ですか。あの絵の、色々なものが平面っぽくごちゃごちゃと散りばめられて浮いているような感じもすごく出ていますね。

りんたろう そうだね。中にはボードレールの肖像画もあったりして、偽直筆で『巨人族の女』の一節が書いてあるんだけど、その内容に即したチラリズム的絵をあしらってあるのですよ。深く知りたければ『悪の華』の中の『巨人族の女』を一読してみて下さりませ。

高橋 絵画、文学、音楽、ダンス…、ハチャメチャに混じっていますね。そして恐竜のジオラマまで!

りんたろう まさにDADAという名のごとく!本多ミュージックもノリノリではじけまくってるしね。のっけから乱入する恐竜のジオラマは本多さんのお宝。

本多 90年代後半に突如出版されて、かなり異彩を放っていた『S.M.H』というフィギュア雑誌があるのですが、そこでモデル製作などを担当なさっていた造型師の匠、山崎シゲル氏からプレゼントされたものです。その雑誌のシリーズ企画のために山崎氏が製作したもので、まさに一点もの、私の宝物でございます(笑)。このジオラマは箱の中に入っていて、奥の方が小さくなっていて、つまり遠近法、距離感がちゃんと表現されてて凄いのです!

高橋 恐竜の肌や背景美術のディテールにも驚きですね。そして今回も音楽、いいですね〜!聞きながらニヤニヤしてしまいました。

本多 フランス、パリと言えば芸術の都!女性作家”恋多き女”ジョルジュ・サンド、彼女に「あの人は天才!」と言わしめた作曲家ベルリオーズ、詩人のアルチュール・ランボー、ヴェルレーヌ達などなど、色々な才能が集ってましたよね。実はサックスを発明したアドルフ・サックスも、彼はベルギー生まれなのですが、同時期パリに居たのです。多分みんなと一緒にどんちゃん騒ぎしてたのでしょうね(笑)。そんな感じの音楽を目指しました。芸術、享楽、退廃、そして監督の十八番エロティック(笑)etc.がごった煮になったみたいな。

高橋 フランスでは「多様性」というちょっと固い言葉をよく使うんですが、この「ごった煮」の環境ってすごく大事だなぁと思います。ところで今回の音楽では楽器だけでなく声も入っていますね。

本多 「ア〜イ〜」は私の声なのですが、これはパリとは全然関係なくて、ゴメンナサイ、『恐竜100万年』という映画 (※イギリスのハマー・フィルムが1966年に制作した特撮映画)で原始人が叫んでいたかけ声なのです。一応T・レックス・ホンダなもので。だからもうキャバレーDADAは時空をも超えた仮想空間!

高橋 本多さんご自身の声だったとは!声の収録はジオラマの中でされたんでしょうね(笑)。ちなみにお二人はキャバレーに行ったことはありますか?

本多 勿論有りますけど、日本のキャバレーというと、今はもう違いますが、バンドが居て、ミュージシャンの貴重な職場でもあった訳です。ジャズクラブだけでは生活出来ないのでキャバレーで稼ぐみたいな。スミマセン、現実的になってしまって(笑)。

りんたろう 僕は、20代後半の頃だったと思うけど、正月明け早々に仕事仲間達とキャバレー行こうぜ!ってことになった。みんな行ったことないからね。で、新宿歌舞伎町にある有名なキャバレーに繰り込んだ。当時キャバレー王と呼ばれた有名人が経営してる「殿方の殿堂!明朗会計!」なんて謳い文句の店でね。意気込んで繰り込んだものの音楽ガンガン黄色い声が飛び交ってて「いらっしゃ~い!」って化粧濃いお姐さんに囲まれちゃって、みんな直立不動で見る影もないくらいコチコチ状態。スタジオで正月明けの新年会があり、その帰りに「行こうぜ!」ってノリ!うち一人はきちんとした和服の出で立ちでキャバレーに行く格好じゃないよね(笑)。で、僕だけはお酒のめない。なのにキャバレー!後でフランスのキャバレーを知って、日本のキャバレーとはまったく違うことが分かったね。

高橋 19世紀~20世紀初頭には文化発祥の地としてのキャバレーがパリにはありましたからね。でも今ではシャンソンを聴かせるシャンソニエもほとんどないですし、世界的に有名なムーランルージュも観光名所みたいになってしまっていますね。その中で、モンマルトルの麓にあるミシューは異彩を放っています。

りんたろう あ、ミシューね!あれこそ快楽の都・パリの華ですぞ!あ、これ読んでる皆さんはミシューって言われてもちんぷんかんぷん…。

高橋 ミシューは知る人ぞ知る?ドラッグクイーン達のものまねショーが有名な、来年で創業60年を迎える老舗キャバレーです。

りんたろう みんな最高の芸達者。ショーが始まる前はスタッフとして客に食事運んだりワイン運んだりしてよく働くんだよね。あと一度だけアルカザールというお店に連れていってもらったことがある。入り口からアールヌーボー世界!衝撃的だった。こんな楽しいところがあるんだ!美女軍団の露出度はたいしたことなかったけど、ボードレールの『巨人族の女』並にみんな大っきなお尻プルンプルンさせてダンス!ダンス!見事なお尻に乾杯したよ。ジュースでね(笑)。

高橋 キャバレーDADAも負けていないですよ。T・レックス・ホンダの生演奏が聞けるんですから!本多さんはキャバレーDADAで演奏されてもう長いんですか(笑)?レインボーの靴下という出で立ちもとてもお似合いですね。

本多 そうですね、長いですよ、ちょうど今年で1億年目かな、なんせT・レックスなもので(笑)。絶滅しないで進化していかなきゃね。最近では鳥になったというのが定説ですから。最新の復元図などはカラフルな羽毛付きモコモコT・レックスちゃんです。衣装も負けないようにもっともっと派手にしていかないとね。

高橋 期待しております!キャバレー談義に花が咲いたところで、そろそろ閉店としますか。

りんたろう うん。ちょっとボードレールの話に戻るけど、『巨人族の女』は膨大な詩の中でもかなりのエロ表現で発表当時は相当な顰蹙を買ったらしい。その顰蹙を買ったところが気に入ってちょいと拝借したわけです。僕も顰蹙覚悟で作ってるからね(笑)。しかし、自分で作ってみるとエロには成り得てないなぁと思う。もっと切磋琢磨しないとアカン!ま、第三作目は詩情あふるる作品狙ってます!ピカソ!ミロ!マチス!大御所のイメージ借りて恐れ入ってますが、さて次の大御所は…、乞うご期待!

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